鼠径ヘルニアのよくある質問
鼠径ヘルニアを手術せずに治す方法はありますか?
現在のところ、鼠径ヘルニアを治療する方法は手術しかありません。
ヘルニアバンド(脱腸帯)は鼠径ヘルニアに効果がありますか?
ヘルニアバンドは一時的に腹部を圧迫し、ヘルニアが飛び出るのを抑えるために使用されますが、これは治療法ではありません。
ヘルニアが治るどころか、場合によっては嵌頓が起こるリスクが高くなるので、当院では使用をお勧めしていません。
まだ痛みがない状態にありますが、受診した方がいいのでしょうか?
痛みを感じていない状態でも、放置するのは禁物です。症状が進行すると、腸が筋肉によって圧迫され、正常な位置に戻らなくなる恐れがあります。これが嵌頓(かんとん)です。嵌頓になると、緊急手術が必要になる可能性があり、日帰り手術での対処は不可能です。
また嵌頓が発生すると、腸内の食物の流れが止まり、腸閉塞を引き起こす恐れがあります。さらに、腸周辺の血管が締め付けられると血の流れが滞り、腸組織の壊死を起こしてしまいます。
こういった状態に陥ると、長期入院や手術を余儀なくされるのに加えて、最悪の場合命を落としてしまうこともあります。そのため、早いうちから受診することをお勧めします。
鼠径ヘルニアのリスクが高い人の特徴は何ですか?
鼠径ヘルニアは、乳幼児や中高年の男性に多く見られ、特に男性患者が患者様全体の80%を占めています。
また、腹部に力がかかる仕事(立ち仕事や力仕事など)をされている方、腹筋や筋力トレーニング、運動を頻繁にされる方、咳が多い型、肥満の方などに多い傾向もあります。
当院で診察した患者様のデータに基づき、下記のような仕事・生活習慣を送っている方は鼠径ヘルニアのリスクが高いのではないかと考えています。
職業
1.力仕事が多い職業
運送業、製造業、建築業、土木業など
2.接客などで立ちっぱなしでいる時間が多い職業
飲食業、倉庫業、美容・理容業、介護職、警察官、フライトアテンダントなど
3.腹筋に力がかかりやすい職業
吹奏楽器の奏者、声楽家、歌手、サッカー選手、野球選手など
4.生活習慣
喫煙、便秘、肥満、喘息がある方、頻繁に大きなくしゃみ・咳をする方
さらに、妊娠は腹圧を高めるため、妊娠経験のある女性にも鼠径ヘルニアが見られることがあります。
鼠径ヘルニアの主な症状について教えてください。
典型的な症状として、立ち上がった時や腹部に力をかけた時に、足の付け根(鼠径部)が膨らんでしまいます。
多くの場合、姿勢を変えるまたは力を抜くと、飛び出た部分は自然と収まります。このような症状の現れ方と消え方をするのが、鼠径ヘルニアの特徴です。
鼠径ヘルニアの原因について教えてください。
鼠径ヘルニアの原因は、先天的なものと後天的なものに分かれます。先天的な原因としては、胎児期に腹膜の穴が自然に閉じることなく、開いたまま残ることが挙げられます。これにより、生まれる前から鼠径ヘルニアを持っていることがあります。このタイプは主に、乳幼児や若年層の患者様に見られます。
後天的な原因としては、加齢や生活習慣、病気が挙げられます。実際に鼠径ヘルニアの中で一番多いのは、この後天的原因によるものです。
加齢により筋膜組織が弱まり、内臓を支える筋肉が緩むことで、お腹の中の臓器が飛び出し、鼠径ヘルニアを起こします。具体的に言いますと、立ち仕事や力仕事、運動、便秘、咳、タバコなど、鼠径部に腹圧がかかる状況・生活習慣が続くと発症しやすくなります。高齢男性の患者様が多いのは、解剖学的な理由(陰嚢によるもの)も含め、これらの要因が積み重なるからです。
さらに、前立腺がんの増加に伴って、前立腺全摘出手術を受けた後に鼠径ヘルニアを発症するケースも増えています。このケースは、手術中に鼠径部の筋膜を剥離することによって起こっているのではないかと考えられています。
成人後に発症した鼠径ヘルニアが勝手に治ることはありますか?
成人における鼠径ヘルニアは、自然に完治しません。
一方、幼児期に発症した鼠径ヘルニアが自然に治るケースもありますが、これに関する正確な統計データは現在のところ確認できていません。
手術後に、鼠径ヘルニアが再発することはありますか?
残念ながら、100%の確率で鼠径ヘルニアを再発させないようにする治療法は確立されていません。ただし、メッシュの改良や手術技術の進歩により、再発率は低下しています。メッシュ使用時の再発率は約2~3%、腹腔鏡手術の場合は1%未満と報告されています。
しかし、どんなにスキル・知識に長けた医師でも、再発を完全に防ぐことは不可能です。再発の主な原因は、「メッシュが適切に固定されていない」または「時間とともにメッシュが縮む」ことです。とはいえ、近年開発されたメッシュは縮みにくいため、再発率は減少傾向にあります。
なお、手術した側とは違う方に新たなヘルニアができるケースもありますが、これは再発とは別物と捉えてください。
臍ヘルニアや腹壁瘢痕ヘルニア、食道裂孔ヘルニアなど、鼠径ヘルニア以外の腹部ヘルニアの治療にも対応していますか?
鼠径ヘルニアや大腿ヘルニア以外の腹部ヘルニアにつきましては、通常、手術による治療が必要です。当院では、原則としてこれらの手術は行っていません。
診断と初期治療には対応できますが、手術が必要な場合は、入院施設を備えた他の医療機関へご紹介します。
また、腰椎ヘルニアや頸椎ヘルニアの治療につきましては、ペインクリニックにてブロック注射などを受けていただくよう案内しています。
診察時、陰部を見せるのが恥ずかしいのですが……。
診察時に陰部を見せることに対して、抵抗感を抱くのは無理もないことかと思います。診察時に診ない部分につきましては、タオルなどで隠していただいたまま、診察を受けていただきますのでご安心ください。
男性の患者様の場合は、女性スタッフには退出させますし、女性の患者様には女性スタッフが同席し、必要な部位以外はタオルでカバーします。
海外に住んでいますが、診察を受けることは可能ですか?
海外にお住まいの日本人の方々をはじめ、日本にお住まいの外国人の方々も当院で診察を受けられています。
患者様一人ひとりの状況に合わせた対応を心がけていますので、どうぞお電話・メールでお問い合わせください。