鼠径ヘルニアは、腹部の一部が鼠径部に突出する状態で、痛みや不快感を引き起こします。
この記事では、鼠径ヘルニアの治療法について、その基本概念から具体的な治療法の選び方、手術方法の詳細比較、患者に適した治療法の選び方、そして治療後の生活とフォローアップについて解説します。
鼠径ヘルニア治療の基本概念
鼠径ヘルニアの治療の目的は、腹部の突出を修復し、再発を防ぐことです。
治療は外科的なアプローチしかありません。外科的治療は恒久的な解決を目指し、治したければ手術を受けることが必須です。
治療法としては、従来からの前方アプローチ(患部を直接切開して治療する方法)と、腹腔鏡を使った内側からのアプローチがあります。再発率が低いのは腹腔鏡を使った方法であり、こちらを選択することが推奨されます。
外科手術 vs 非外科的治療
鼠径ヘルニアを根本的に治す方法は外科手術しかありません。非外科的治療としてヘルニアバンドがあり、これは一時的に膨らみを抑えるためのものですが、治療効果はありません。外科手術の利点は根本的な解決ができること、持続的な効果が期待できること、迅速な回復が可能なことです。
一方、手術リスクや入院の必要性、費用が欠点となります。繰り替えになりますが非外科的治療は一時的な対策に過ぎず、根本的な治療にはなりません。
手術方法の詳細比較
鼠径ヘルニアの手術方法には、自己組織手術、人工メッシュ手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術があります。
- 自己組織手術は腹壁を縫い縮める方法で、異物反応がありませんが、再発率が高いです。
- 前方アプローチはお腹を切ってメッシュで穴を塞ぐ方法で、再発率がそこそこ低いですが、腹腔鏡手術にはかなり劣ります。また、感染のリスクがあります。
- 腹腔鏡手術は内視鏡を使用して内側から修復する方法で、再発率が非常に低く、術後の痛みや回復期間が短いです。
- ロボット支援手術はロボットアームを使った高精度の手術で、再発率が低くなりますが、非常に高い費用がかかります。
また、腹腔鏡手術にはTAPPとTEPという2つの方法があります。TAPPは腹腔内に入ってから修復する方法で、TEPは腹膜を開けずに腹膜外から修復する方法です。
患者に適した治療法の選び方
治療法や手術方法を選ぶ際には、年齢、健康状態、ライフスタイルなどを考慮する必要があります。
- 年齢:高齢者でも手術が可能な健康状態であれば、腹腔鏡手術が推奨されます。
- 健康状態:糖尿病などの慢性疾患がある場合、感染リスクに注意が必要です。
- ライフスタイル:アクティブなライフスタイルを送る人には再発リスクが低い治療法が適しています。
手術方法を決定する際には、専門医の意見を尊重しつつ、患者さんの希望も十分に考慮することが重要です。
治療後の生活とフォローアップ
治療後の生活では、特に制限されるものはありませんが、腹圧をかけないことが重要です。術後早期には傷口を清潔に保つことが必要であり、1週間程度は感染を防ぐために注意が必要です。
その後は1か月程度、腹圧をかけない生活を心掛けます。再発のリスクを最小限に抑えるためには、腹圧がかかる状況を避けることが重要です。
再発した場合は再度手術が必要となりますので、注意が必要です。
以上が鼠径ヘルニア治療法の比較と選び方についての解説です。患者それぞれの状況に応じて最適な治療法を選ぶことが重要です。