慢性胃炎について
慢性胃炎は、胃の粘膜に長期にわたる炎症が見られる状態を指します。この状態では、特定の病気がなくても胃の違和感や吐き気といった症状が現れることがあります。
炎症は、赤みや腫れ、ただれといった形で現れ、これらは検査によって確認されることもあれば、患者様の訴える症状や他の原因に基づいて慢性胃炎と診断されることもあります。
慢性胃炎が長く続くと、胃液の分泌を担う胃腺が減少し、胃粘膜が薄くなり、萎縮してしまうことがあります。これを「萎縮性胃炎」と呼びます。
萎縮性胃炎は、胃がん患者においてよく見られる胃の状態ですが、必ずしも胃がんへと進行するわけではありません。
慢性胃炎の症状について
慢性胃炎が起こる原因
慢性胃炎の主な原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)による持続的な感染です。ピロリ菌は、土壌に存在する全長3~5μmの微生物で、井戸水に生息することもあります。この菌が混入した井戸水を摂取することで人々は感染し、感染者が乳幼児に食べ物を口移しする行為を通じて感染が拡がるとされています。
多くの場合、4~5歳頃に感染し、ピロリ菌は胃粘膜に定着して感染を広げます。除菌治療を受けない限り、感染は生涯続く可能性があります。
胃には菌を死滅させる強力な胃酸が存在しますが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を用いてアンモニアを生成し、これによって胃酸から自身を保護します。アンモニアとピロリ菌が生成するサイトトキシンという毒素が胃粘膜を傷つけ、慢性的な炎症を引き起こします。この影響で胃粘膜は薄くなり、萎縮していきます。
他にも、「自己免疫性胃炎」や「A型胃炎」と呼ばれる炎症があり、これらは患者様の免疫システムが自身の胃細胞を攻撃することで進行します。
胃の中心部である胃体部には顕著な委縮が見られ、十二指腸に近い前庭部には委縮が見られない特徴的なパターンがあります。このタイプの胃炎は、悪性貧血の検査で発見されることが多いです。
慢性胃炎の検査について
慢性胃炎は通常、胃カメラで発見されることが多いです。慢性胃炎の診断がなされた場合、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が疑われるため、検査を行うことが推奨されます。ピロリ菌の検査方法には、胃カメラ検査中に胃組織のサンプルを採取する生検、尿素呼気試験、血液や尿の抗体検査、便中の抗原検査などがあり、これらはしばしば組み合わせて使用されます。
ピロリ菌の感染は委縮性胃炎を引き起こす原因の一つであり、委縮性胃炎は胃潰瘍や胃がんとの関連が知られています。胃粘膜の萎縮の程度は、胃カメラによる直接観察のほか、血液検査での評価も可能です。さらに、血液検査でピロリ菌に対する抗体とペプシノゲンのレベルを測定し、その結果を基に胃がんのリスクを評価する「ABC検診」という方法もあります。
慢性胃炎を治すには
慢性胃炎と診断された場合でも、症状がない時は通常、治療をせずに経過を観察します。症状が現れた際には、それに合わせた薬物治療が施されます。
もし慢性胃炎がヘリコバクター・ピロリ菌の感染が原因である場合、除菌治療が行われます。この治療には、胃酸の分泌を抑制する薬と2種類の抗生物質を含む3種類の薬を1週間摂取し、その後一定期間経て除菌の成否を確認する検査が実施されます。
もし除菌が不成功だった場合は、二次除菌として、異なる抗生物質に変更し、再び3種類の薬を1週間摂取します。その後、除菌の成否を再検査します。
この二次除菌まで健康保険が適用されることが一般的です。