虫垂炎とは
虫垂炎は、虫垂が細菌によって感染し、化膿して炎症を起こす病気です。一般的に「盲腸」とも呼ばれますが、正式名称である「急性虫垂炎」と称されることが多くなっています。
この病気は4歳以上の子供や成人に見られ、特に10代~20代の若年者(特に男性)や白人の発症例が多い傾向にあります。
虫垂炎の詳しい原因はまだ解明されていませんが、便が虫垂の入口を塞ぐことや、腸内細菌の二次感染が原因ではないかと考えられています。
虫垂炎の症状について
右下腹部の痛みが虫垂炎の典型的な症状です。この痛みは圧迫すると強くなり、症状が進むにつれて、歩く時にも痛みが強く出やすくなります。また中には、激痛によって救急車を呼ぶケースも珍しくありません。
痛みはみぞおち周辺で起こり始めることもあり、重度の虫垂炎の場合は下痢も合併するケースもあるので、注意が必要です。
虫垂炎の診断
触診をはじめ、血液検査、腹部超音波検査、そしてCT検査が行われます。触診ではお腹の状態をチェックし、血液検査では炎症の状態や白血球数を測定します。
腹部超音波検査は、虫垂の腫れ具合や、他に可能性のある病気を見つけ出すために行われます。
虫垂炎に似た症状を示す病気としては、大腸憩室炎、ウイルス性回腸末端炎、女性では骨盤腹膜炎や右卵巣の炎症、軸捻転、子宮外妊娠などが挙げられます。
虫垂炎の治療
虫垂炎は急に起こる病気です。炎症を治さずにいると、腸閉塞や腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあるため、かつては急性虫垂炎の診断を受けた患者様には、開腹手術を行ってきました。
しかし、近年では画像診断技術の向上や新しい抗生物質の開発により、初期段階では抗生物質による治療が主流となっています。炎症が落ち着いた後は、腹腔鏡を用いた待機的虫垂切除が行われます。ただし、強い痛みや膿瘍が見られる場合は、手術が望ましいこともあるため、安易にご自身で判断せず、専門医と相談する必要があります。
痛みがなくなった際手術は必要?
保存的療法によって痛みが和らいだ患者様から、手術の必要性について質問されることがよくあります。ただし実際に、保存療法によって完治できた患者様の約半数が、再発を経験しているとの報告があります。
再発は、免疫力や体力が落ちた時に特に起こりやすいとされています。そのため、体調が良くなった際には、手術を計画的に受けることをお勧めします。
当院の虫垂炎の手術
過去に行われてきた虫垂切除手術では、右下腹部を5〜10cm程度切開し、虫垂を取り出す方法が行われました。
しかし、現在では腹腔鏡を利用した手術が一般的で、特に単孔式腹腔鏡下虫垂切除術では、おへその小さな穴から腹腔鏡を挿入し、虫垂を摘出します。
この方法では、傷跡がおへその穴と区別がつかないほど小さくなるのが特徴です。治療についてご不明な点がありましたら、遠慮なくご相談ください。
単孔式腹腔鏡下虫垂切除術とは?
単孔式内視鏡手術は、小さな穴を1つ作り、そこから手術器具と内視鏡を挿入する術式です。この方法は高度なスキルが要求されます。
通常の内視鏡手術では3つ穴を作る必要がありますが、単孔式では1つだけで済みます。また、切開部がおへその位置にあるため、手術後の傷が目立たないという利点があります。
当院の虫垂炎手術
当院では、3~4箇所切開する従来の腹腔鏡手術ではなく、おへそに2cmの小さな創を作る方法が行われます。患者様の回復が早く進む方法で、開腹手術への移行率が非常に低いことも特徴です。腹腔鏡を用いて行う日帰り手術で、当院独自の技術と経験を活かしていきます。
虫垂炎の手術費用
虫垂炎の手術に関する費用は、国内で一律に設定されており、保険が適用されます。日帰り手術を選択すれば、入院にかかる費用が節約でき、経済的な負担が軽くなります。患者様の自己負担金額は、加入している保険の種類や年齢によって変わります。また、年収に応じた高額療養費制度により、支払いの上限額が決められています。
1割負担 | 約28,000円 |
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3割負担 | 約84,000円 |
よくある質問
虫垂はどこにあるのですか?
虫垂は大腸の一部で、右下腹部に位置する臓器です。
盲腸と虫垂炎はどう違うのですか?
盲腸は大腸の一部であり、虫垂炎はその部分が炎症を起こした状態を指します。盲腸そのものは病名ではありません。
虫垂炎が起こる原因について教えてください。
正確な原因はまだ特定できていませんが、リンパ組織の腫れや便の塊、腫瘍などによって虫垂の開口部が塞がれた結果、細菌感染を引き起こすことで発症すると考えられています。
これらは痛みの原因となることもあります。
虫垂炎になると、どういった症状が出ますか?
初期の虫垂炎の場合は、お腹の不快感やみぞおち周辺の痛みが起こります。時間が経つにつれて、特に右下腹部の痛みが顕著になります。
症状が進行すると、痛みは腹部全域に広がることがあります。嘔吐、発熱、下痢、食欲減退などの症状もしばしば伴います。
虫垂炎の治療方法について教えてください。
虫垂の穿孔のリスクが低い場合や、症状が軽度の虫垂炎だった場合は、抗生物質による治療が行われます。この治療法で症状が改善しない場合は、手術が検討されます。
なお、抗生物質の治療後に虫垂炎が再発するケースは約10~35%と報告されています。
虫垂炎に似た病気にはどのようなものがありますか?
大腸憩室症や憩室炎などがあります。憩室は盲腸の近くで発生することが多く、炎症が起こると虫垂炎との区別が難しくなります。
そのため、症状が現れた場合はCT検査を受けて正確な診断を得ることが重要です。
虫垂炎はどの年齢層でよく見られますか?
虫垂炎はあらゆる年齢でも起こり得ますが、10代~20代の若年層での発症が多いとされています。
虫垂炎はどうすれば予防できますか?
虫垂炎の具体的な原因は未だ明らかではありませんが、便の塊が虫垂の入口を塞ぐことが一因とされています。
そのため、食物繊維を豊富に摂取する食習慣を心がけるようにしましょう。